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伝導ノイズと放射ノイズの違いとは?ノイズの種類と性質に応じた制御対策を解説

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電子機器の設計やトラブルシューティングにおいて、避けて通れないのが「ノイズ」の問題です。ノイズ対策を効果的に進めるには、闇雲に部品を実装するのではなく、まずノイズが「どのような経路で伝わっているのか」を把握することが重要です。
ノイズの伝播経路は、大きく分けて「伝導(Conduction)」と「放射(Radiation)」の2種類に分類されます。これらは物理的に性質が異なるため、それぞれに最適な対策アプローチも異なります。
本記事では、伝導ノイズと放射ノイズの定義やメカニズムの違いを整理し、現場で役立つ具体的な対策の考え方を解説します。

伝導ノイズと放射ノイズの定義と特徴

ノイズはその伝わり方によって、物質を介するものと空間を介するものに分けられます。まずそれぞれの定義と、両者を切り分ける重要な指標である「周波数」の概念を整理します。

導体を伝わる伝導ノイズ

伝導ノイズとは、電源線、信号線、あるいはプリント基板の配線といった「導体」に物理的に伝わっていくノイズのことです。ノイズ源から発生した不要な電気成分が、配線を伝って他の回路や機器へ直接流れ込む現象を指します。
例えば、同じコンセントに接続された機器同士が干渉し合う場合、その多くは電源線を介した伝導ノイズが原因です。このノイズは配線が繋がっている限り遠くまで伝わるため、システムの安定稼働を阻害する要因になります。

空間を伝わる放射ノイズ

放射ノイズとは、配線や金属筐体が「アンテナ」のような役割を果たし、空間に電磁波として放出されるノイズのことです。配線による繋がりがなくても、空間を介して電磁波が飛び交い、離れた場所にある機器に侵入して悪影響を及ぼします。
スマートフォンやワイヤレス機器の通信が途切れたりするトラブルは、この放射ノイズによる干渉が主な原因です。目に見えない電波として広がるため、発生源の特定や遮断には専門的な知識と手法が必要です。

周波数帯域によるノイズの変化とその規格

ノイズが伝導として現れるか放射として現れるかは、その「周波数」に大きく依存します。
低い周波数帯域(30MHz以下)では、エネルギーの多くが配線を伝わる伝導ノイズとして現れます。
一方、周波数が高くなる(30MHz以上)につれて、電気信号は空間に電磁波として放射されやすくなります。
この30MHzという境界は、CISPR規格をはじめとする代表的なEMC規格において伝導試験と放射試験を切り替える基準の一つであり、対策を検討する際の重要な目安です。

伝導ノイズの種類とメカニズム

配線に伝わるノイズには、電気が流れる向きによって2つの異なるモードが存在します。これらを正しく判別することが、適切なノイズフィルタを選択する上での前提となります。

電源線や信号線への重畳

伝導ノイズは、本来流すべき信号や電力に重なる(重畳する)形で伝わります。これは、回路内のスイッチング素子が高速でON/OFFを繰り返したり、モーターが回転したりする際に発生する急激な電圧・電流の変化が原因です。
ノイズが重畳すると、信号の波形が歪んだり、基準となる電位(グランド)が揺らいだりします。その結果、デジタル回路が「0」と「1」を誤判別するといった誤動作につながることもあります。

ノーマルモードとコモンモード

伝導ノイズを理解する上で最も重要なのが、「ノーマルモード」「コモンモード」の違いです。

  • ノーマルモードノイズ:往路と復路の配線を、互いに逆向きに(差動で)流れるノイズです。回路内をループするように流れるため、「ディファレンシャルモード」とも呼ばれます。
  • コモンモードノイズ:往路と復路の配線を、同じ向きに流れるノイズです。配線と大地(グランド)との間に生じる浮遊容量などを介して、大地を帰路として流れます。

特にコモンモードノイズは大きなループを形成するため、放射ノイズに変化しやすく、対策が難しい厄介な存在です。

放射ノイズの発生源と伝播プロセス

放射ノイズは、電気エネルギーが電磁波に姿を変えて空間へ放出される現象です。なぜ意図しない場所から電波が出てしまうのか、そのメカニズムを探ります。

配線や筐体のアンテナ化

本来、信号を伝えるための配線や、基板のパターン、あるいは機器を覆う金属筐体は、アンテナとして設計されているわけではありません。
しかし、流れる信号の周波数が高くなり、配線の長さがその波長の4分の1や2分の1などの共振条件に近づくと、効率よく電磁波を放射する「アンテナ」として機能します。共振条件から外れていても放射は起こりますが、共振付近で最も強くなる点に注意が必要です。
なかでも、長く伸びたケーブルや筐体の継ぎ目にある隙間(スリット)は、放射ノイズの出口になりやすい箇所です。意図しない「予期せぬアンテナ」をいかに排除するかが、放射ノイズ対策の核心といえます。

直接放射と二次放射の違い

放射ノイズの伝わり方には、発生源から直接放射されるケースと、一度他の経路を経由するケースがあります。

  • 直接放射:IC(集積回路)や基板上の配線から、直接空間に電磁波が放出される現象です。
  • 二次放射:回路内で発生した伝導ノイズが電源ケーブルなどに伝わり、そのケーブルがアンテナとなって空間にノイズを撒き散らす現象です。

多くのケースでは、回路内部の微弱な直接放射よりも、ケーブルを介した二次放射の方が周囲への干渉問題を引き起こしやすい傾向があります。そのため、放射ノイズの対策であっても、まず「ケーブルにノイズを乗せない」という伝導対策から着手することが効果的です。

性質に応じたノイズ抑制対策

伝播経路が判明したら、次は具体的な対策です。フィルタ、シールド、レイアウト設計という3つの手法について、ノイズの性質に合わせた使い分け方を解説します。

伝達経路を断つフィルタリング

伝導ノイズに対して最も一般的で効果的な手法が「フィルタリング」です。
コンデンサやコイル(インダクタ)を組み合わせたノイズフィルタを配線に挿入することで、必要な信号は通しつつ、不要なノイズ成分をブロックしてグランドへ逃がすことができます。
具体的には、ノーマルモード対策には配線間にコンデンサ(Xコンデンサ)とノーマルモードチョークコイルを、コモンモード対策にはコモンモードチョークコイルや配線とグランド間のコンデンサ(Yコンデンサ)を配置します。ノイズのモードに合わせて適切なフィルタ構成を選ぶことが、対策成功の鍵です。 ノイズフィルタ回路

なお、ケーブルに後付けで装着できるフェライトコア(クランプフィルタ)も、高周波の伝導ノイズを手軽に低減できる手段として広く用いられています。いずれのフィルタも、ノイズ源のできるだけ近くに配置することが原則で、フィルタまでの配線が長いとその区間自体が放射ノイズの発生源になりかねません。

空間を遮断するシールドと接地

放射ノイズに対しては、空間的な遮断を目的とした「シールド」が有効です。ノイズ源を金属製のケースやメッシュで覆うことで、内部からの放出や外部からの侵入を、反射や吸収によって物理的に遮断します。
ただし、シールドを機能させるためには、適切な「接地(グラウンディング)」が不可欠です。金属筐体を安定した電位に接続しなければ、シールドそのものがノイズを放射するアンテナになってしまいます。また、ケーブルをシールド付きに変更し、末端をコネクタを介して適切に接地することも、有効な放射対策です。

部品レイアウトの最適化

後付けの対策(フィルタやシールド)にはコストやスペースの制約が伴うため、設計段階での「部品レイアウトの最適化」が理想的です。
ノイズのループ面積を最小限に抑える、高速信号線の周囲に十分なグランドプレーンを配置する、鋭角な配線を避けるといった手法で、ノイズの発生そのものを抑制できます。特に多層基板ではグランド層を適切に配置することで、伝導・放射の両面で大きな改善効果が期待できます。

まとめ

伝導ノイズと放射ノイズは一見異なる現象ですが、実は密接に関連しています。低い周波数で配線を流れていたノイズが高い周波数で空間に放射されることもあれば、空間を伝わってきた電磁波が配線に飛び込み、伝導ノイズとして回路を乱すこともあります。

そのため対策を考える際は、まず「ノイズがどの経路を通っているのか」を見極めることが出発点です。経路が特定できれば、伝導ノイズにはフィルタリング、放射ノイズにはシールドと、取るべき手法も自ずと絞られてきます。
それらに加えて部品レイアウトの改善を組み合わせることで、はじめて確実なノイズ抑制につながります。実際の製品開発では、CISPRやIEC、FCCといったEMC規格への適合が求められるため、対策の方向性はこれらの規格が定める試験基準を意識して決めることになります。

電子機器の高機能化が進む中、伝播メカニズムへの理解を深めつつ、論理的な対策を積み重ねていくことが、製品の信頼性と品質を高める確かな手段になります。

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