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EMIとは?EMSとの違いやEMCを支える放出抑制・耐性向上のための対策を解説

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現代の電子機器開発において、避けては通れないのが「ノイズ問題」です。優れた機能を持つ製品でも、周囲への電磁妨害や、わずかな電波による誤動作が起きれば、製品として成立しません。

こうしたトラブルを防ぐための土台となるのが、EMI(電磁妨害)とEMS(電磁感受性)という2つの概念です。この両者を正しく理解し、バランスよく対策を講じることが、電磁両立性(EMC)を実現するための基本となります。本記事では、EMIとは何かという基礎から、EMSとの決定的な違い、そして具体的な放出抑制・耐性向上のための実務的な手法までを詳しく解説します。

EMIとEMSの違いとEMCにおける役割

ノイズ対策には「出す側」と「受ける側」という2つの視点があります。これらがどのように組み合わさって製品の品質を支えているのか、まずは全体像を整理しましょう。

電磁両立性を実現するEMC

EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)とは、一言で言えば「電磁的な共存」です。
電子機器が数多く混在する現代社会において、特定の機器が発する電磁波が他者に迷惑をかけず、かつ他者からの影響にも耐え、双方が正常に動作し続けられる能力を指します。

このEMCという大きな目標を達成するために必要な2つの柱が、次に説明する「EMI」と「EMS」です。EMCは達成すべき目標であり、EMI対策とEMS対策はその目標を実現するための2つの手段です。

EMI(電磁妨害)とエミッション

EMI(Electromagnetic Interference)は、日本語で「電磁妨害」や「電磁干渉」と呼ばれます。ノイズ対策「出す側」の視点では、「エミッション(Emission:放出)」という言葉が使われます。
これは、機器そのものが動作する過程で意図せず発生させ、外部に放散してしまう電磁波ノイズのことを指します。
EMIが強い製品は、周辺にあるテレビの画面を乱したり、精密機器のセンサーを狂わせたりする「加害者」になってしまいます。そのため、自社製品が外部へ放出するノイズを一定の基準値以下に抑えることが、製品開発における基本的な要件として求められます。

EMS(電磁感受性)とイミュニティ

対するEMS(Electromagnetic Susceptibility)は「電磁感受性」と訳され、外部からのノイズに対してどれだけ影響を受けやすいかという性質を示します。実務上は、耐性の高さに着目した「イミュニティ(Immunity:耐性)」という表現で語られることが一般的です。
EMSが"影響の受けやすさ"を表すのに対し、イミュニティは"影響への強さ"を表す表裏一体の概念です。
イミュニティが高い機器とは、雷、静電気、無線通信の電波といった外部のノイズに晒されても、誤動作を起こさない「タフな機器」のことです。EMSは、製品がノイズ環境下で「被害者」にならないための強さを表す指標と言えます。

なぜ両者を両立させる「EMC設計」が必要なのか?

EMI(出さない)とEMS(負けない)を同時に考慮する「EMC設計」が必要な理由は、現代の電磁環境が非常に複雑で混在しているからです。自社製品がノイズを出さないように配慮しても、隣の機器がノイズを出す可能性は常にあります。
また、法規制の観点からも、EMIとEMSの両方の基準をクリアしなければ、国内外の主要な市場で製品を販売することはできません。品質、安全性、法規制への適合という三要素を同時に満たすために、設計の初期段階から両者をバランスよく組み込むことが不可欠です。

EMI対策と放出抑制の手法

EMI対策の基本は、ノイズを「発生させない」ことと、発生したノイズを「外に出さない」ことです。設計者が意識すべき具体的な手法を見ていきましょう。

発生源で抑える回路設計

最も効率的なEMI対策は、ノイズの発生源(ソース)となる回路そのものを見直すことです。
例えば、デジタル信号の立ち上がり・立ち下がりをわずかに緩やかにすることで、高周波ノイズの発生を大幅に抑えることができます。
また、基板上の配線ループ面積を最小化することも極めて有効です。電流が流れる経路と、それが戻る経路(グランド)を近接させることで、磁界の相殺が起こり、外部へ放射されるノイズを激減させることができます。部品配置の段階で、ノイズ源となるスイッチング素子を適切にレイアウトすることが、最も効果的なアプローチです。

外部への流出を防ぐフィルタリング

発生したノイズが電源ケーブルや信号線を伝って外部へ流出しようとする場合、フィルタリング技術によってその経路を遮断します。
具体的には、電源入力部にノイズフィルタ(コモンモードチョークコイルやコンデンサ)を挿入し、不要なノイズ成分だけをブロックしてグランドへバイパスさせます。これにより、配線がアンテナ化してノイズを撒き散らす「二次放射」を防ぐことができます。適切なフィルタ選定は、EMI規格をクリアするうえで非常に有効な手段です。

EMS対策と耐性向上の手法

EMS対策では、外部から侵入しようとするノイズを「入れない」ことと、入ってきたとしても回路が「耐える」ことが重要です。

内部回路を保護する遮蔽技術

空間を伝わってくる強力な電波や静電気放電から心臓部を守るためには、物理的な「遮蔽(シールド)」が有効です。金属製の筐体やシールドケースを用いて、ノイズの影響を受けやすい回路を覆うことで、外部の電磁界を物理的に遮断します。

この際、シールドの接地(アース)を適切に行わないと、逆にシールドがノイズを集めるアンテナになってしまうため注意が必要です。また、隙間のない構造にすることで静電気の直接的な侵入を防ぐことができます。なお、シールドは内部のノイズ源から外部への放射を遮断する目的でも使われるため、EMS対策だけでなくEMI対策としても有効です。

誤動作を防ぐ信号処理と堅牢化

ノイズを完全に防げないことを前提に、回路やソフトウェア側で耐性を高める対策を講じることも重要です。回路側では、センサー入力にデジタルフィルタを適用してスパイクノイズを除去したり、重要な信号に差動信号を採用して外来ノイズの影響をキャンセルしたりする手法があります。

また、回路そのものをノイズに強くする「堅牢化(ハードニング)」も有効な手段です。入力ラインにサージ保護素子(TVSダイオードやバリスタ)を追加することで、雷サージや静電気放電による素子破壊を未然に防ぐことができます。ソフトウェア側では、ウォッチドッグタイマ(WDT)を活用して、万が一ノイズによってCPUがフリーズしても自動的に再起動する仕組みを組み込むことで、システムの安定稼働を維持できます。

GDT・バリスタ入力ライン対策例

製品開発におけるEMC試験:EMIとEMSの評価方法

対策を施した結果が十分であるかどうかは、最終的に「EMC試験」によって数値で証明されなければなりません。試験の種類と、その重要性について確認します。

規格の許容値と評価方法

EMC試験は、大きく「エミッション試験(EMI測定)」と「イミュニティ試験(EMS測定)」に分けられます。
EMI測定では、電波暗室で製品が放射する電磁波の強さを測定する「放射エミッション試験」と、電源線や信号線を通じて外部へ流出するノイズを測定する「伝導エミッション試験」の2種類があり、それぞれ規格が定める許容値以下であることを確認します。

一方、イミュニティ試験では、製品にあえて静電気を当てたり、強力な電波を浴びせて、誤動作が起きないかを評価します。これらの試験は厳格な環境下で行われ、その合否が製品の市場投入を決める重要な判断基準となります。

市場トラブルを防ぐ適合性確認

試験基準(CISPRやIECなどの国際規格、さらにFCC(米国)やCEマーキング(EU)などの各国・地域の規制)に適合していることを確認することは、単なる手続きではありません。
これは、現実の過酷なノイズ環境下で製品が正常に動くことを担保する「信頼性の証」でもあります。

製品が市場に出てからノイズによる誤動作や、他機器への干渉が発覚すると、リコールや設計変更に莫大なコストがかかります。開発の各段階で適合性を確認するプロセスを組み込むことが、結果として最もコストパフォーマンスの高い製品開発に繋がります。

まとめ

EMIとEMSは、電子機器が現代社会で共存するための2つの側面です。機器からのノイズ放出を抑え(EMI対策)、外部からのノイズにも耐える(EMS対策)ことで、製品は信頼性の高いものになります。

ノイズ対策は、場当たり的な部品追加では解決しません。EMIとEMSの違いを正しく理解した上で、発生源の抑制、経路の遮断、回路の堅牢化といった手法を組み合わせることが重要です。特定の対策だけに偏ると、一方の問題を解消しても別の問題が残るケースも少なくないため、両者をバランスよく設計に織り込む視点が求められます。

また、対策の効果は最終的にEMC試験によって数値で検証されます。開発の早い段階からEMCを意識した設計を進めることで、試験での手戻りを減らし、コストと時間の無駄を防ぐことにもつながります。EMC設計を製品開発の中核に据えることで、過酷な環境下でも安定したパフォーマンスを発揮し、市場で高い評価を得る製品につながります。

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