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フィルムコンデンサとは?用途や特徴、構造などの基礎知識を解説

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電子機器の設計開発において、コンデンサの選定は回路の性能や信頼性を左右する重要な工程です。
なかでも、フィルムコンデンサは優れた周波数特性や温度安定性、長寿命といった特長を持ち、電源回路やノイズ対策、モータ駆動回路など幅広い用途で採用されています。

しかし「セラミックコンデンサや電解コンデンサとの違いがわからない」「自社の設計にどのフィルムコンデンサを選定すべきか判断できない」といった課題を抱える設計担当者も少なくありません。

そこで本記事では、フィルムコンデンサの基本構造や動作原理から、種類ごとの特徴、ほかのコンデンサとの違い、具体的な用途まで、電気設計に携わる方に向けて体系的に解説します。

フィルムコンデンサとは

フィルムコンデンサの基本的な定義

フィルムコンデンサとは、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンといったプラスチックフィルムを誘電体として用いたコンデンサの総称です。

誘電体フィルムの両面、あるいは片面にアルミニウムなどの金属を電極として形成し、それを巻回または積層することで静電容量を得る構造となっています。

セラミックコンデンサや電解コンデンサと比較して、周波数特性の安定性や絶縁抵抗の高さ、温度変化に対する容量変化の小ささなどに優れており、電源回路やモータ駆動回路のノイズ対策など、幅広い分野で利用されています。

コンデンサ全体における位置づけ

コンデンサは誘電体の種類によって、主に「セラミックコンデンサ」「電解コンデンサ(アルミ電解・タンタル電解)」「フィルムコンデンサ」の3つに大別されます。

セラミックコンデンサは小型かつ大容量化が進んでいる一方で、印加電圧や温度による容量変化(DCバイアス特性、温度特性)が大きいという課題があります。

電解コンデンサは大容量が得られる反面、寿命や温度特性、極性の制約があります。

これに対しフィルムコンデンサは、容量の温度依存性や電圧依存性が小さく、無極性であることに加え、高い絶縁抵抗と優れた自己回復性を持つことから、信頼性が求められる回路に適したコンデンサとして位置づけられています。

フィルムコンデンサの構造と動作原理

誘電体フィルムと電極の基本構造

フィルムコンデンサの基本構造は、誘電体となるプラスチックフィルムと、電極となる金属箔または金属蒸着膜を組み合わせたものです。

電極の形成方法には、金属箔を誘電体フィルムと重ねて巻く「箔電極方式」と、フィルム表面にアルミニウムなどを直接蒸着させる「蒸着電極方式」の2種類があります。

蒸着電極方式は、内部で短絡が発生した際に蒸着膜が瞬時に蒸発・消失することで絶縁性を回復する「自己回復性(セルフヒーリング性)」を持つ点が大きな特徴です。

巻回型・積層型の構造の違い

フィルムコンデンサの構造は、大きく「巻回型」と「積層型」に分けられます。

巻回型は、誘電体フィルムと電極を重ねて円筒状に巻き上げる構造で、比較的、容易に大容量化が可能です。

一方、積層型はフィルムと電極を平板状に積み重ねる構造で、巻回型に比べてインダクタンス成分が小さく、高周波領域での特性に優れる点が特徴です。

用途や求められる周波数特性、実装スペースなどに応じて、これらの構造が使い分けられています。

静電容量が生まれる仕組み

コンデンサの静電容量は、対向する電極間に誘電体を挟むことで生まれます。
電極間に電圧を印加すると、誘電体内部で分極が生じ、電荷を蓄積することが可能になります。
静電容量の大きさは、電極の対向面積、誘電体の厚み、誘電体の比誘電率によって決まります。

フィルムコンデンサの場合、誘電体フィルムを薄くすることで小型化と大容量化を両立できますが、耐電圧とのトレードオフとなるため、用途に応じた設計が必要です。

フィルムコンデンサの種類と特長

ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムコンデンサ

ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムコンデンサは、比誘電率が比較的高いため小型化しやすく、コストパフォーマンスに優れることから、一般的な電子機器の回路に広く使用されています。

ただし、後述するポリプロピレンフィルムコンデンサと比較すると、誘電正接(tanδ)がやや大きく、高周波特性や温度特性の面では劣る傾向があります。
そのため、高精度・高周波用途よりも、一般的なカップリングやバイパス用途などに適しています。

ポリプロピレン(PP)フィルムコンデンサ

ポリプロピレン(PP)フィルムコンデンサは、誘電正接が小さく低損失であることに加え、優れた周波数特性と高い絶縁抵抗を持つことが特徴です。

自己回復性にも優れており、高耐圧が求められるスナバ回路や、インバータ・モータ駆動回路など、大電流・高周波が印加される用途に多く採用されています。

ポリエチレンテレフタレートタイプと比較して比誘電率は低いものの、電気的特性のバランスに優れる点から、産業機器や車載機器など高信頼性が求められる分野で選定されるケースが多く見られます。

ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムコンデンサ

ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムコンデンサは、耐熱性に優れ、温度変化に対する容量変化率が非常に小さいという特徴を持ちます。

高温環境下でも安定した特性を維持できることから、車載機器や産業機器など、過酷な温度条件で使用される回路に適しています。

ほかのフィルムコンデンサと比較して高価であるため、高い温度安定性が必須となる用途に絞って採用されることが一般的です。

  ポリエステルテレフタレート(PET) ポリプロピレン(PP) ポリフェニレンサルファイド(PPS)
コスト 非常に優れる 優れる 劣る
小型化 非常に優れる やや劣る 優れる
耐熱性 優れる やや劣る 非常に優れる
耐湿性 やや劣る 非常に優れる 優れる
誘電正接 優れる 非常に優れる 非常に優れる

フィルムコンデンサの主な特長

優れた周波数特性と低損失性

フィルムコンデンサは、誘電正接(tanδ)が小さく、高周波領域においても損失が少ないという特長があります。

これにより、電力損失に伴う発熱を抑制でき、スイッチング電源やインバータ回路など、高周波でのスイッチング動作が行われる回路において安定した性能を発揮します。

高い絶縁抵抗と自己回復性

フィルムコンデンサは絶縁抵抗が高く、リーク電流が小さいことから、長期間にわたり安定した特性を維持できます。

また、蒸着電極方式のフィルムコンデンサは、内部で微小な絶縁破壊が発生した際に、蒸着膜が瞬時に蒸発してその部分を絶縁化する自己回復性(セルフヒーリング性)を備えており、突発的な短絡による故障のリスクを低減します。

温度・湿度に対する安定性

フィルムコンデンサは、セラミックコンデンサや電解コンデンサと比較して、温度変化に対する静電容量の変化率が小さく、安定した特性を維持できる点が特徴です。

また、電解コンデンサのように電解液を使用しないため、液漏れやドライアップ(電解液の枯渇)といった経年劣化のリスクが低く、湿度環境に対しても比較的安定した性能を発揮します。

さらに近年の異常気象による急激な温湿度変化に対応するため、耐湿性を極限まで高めた製品へのニーズが高まっています。こうした要求に対し、当社では一部製品にて国際規格IEC 60384-14:2023 ANNEX I耐湿性等級の最高グレードIIIBをクリアした製品をラインアップしています。高温高湿下での電圧負荷試験を経て実証された高い信頼性は、機器の安定稼働を支えます。

長寿命・高信頼性

電解コンデンサは電解液の枯渇により経年的に容量が低下する傾向がありますが、フィルムコンデンサは固体の誘電体フィルムを使用するため、経年劣化が少なく長寿命であることが特徴です。

このような特性から、長期間の使用が想定される産業機器や車載機器、社会インフラ関連の設備など、高い信頼性が求められる分野で数多く採用されています。

フィルムコンデンサの主な用途

電源回路・平滑回路での活用

フィルムコンデンサは、スイッチング電源におけるノイズ除去用のバイパスコンデンサや平滑コンデンサとして幅広く使用されています。

低損失かつ高周波特性に優れることから、電源回路の高効率化・小型化に貢献します。

ノイズ対策・EMC対策での活用

高い周波数特性を活かし、フィルムコンデンサはノイズフィルタやEMC(電磁両立性)対策部品としても多く採用されています。

特に、ポリプロピレンフィルムコンデンサはノイズ抑制効果と信頼性の両立が求められるライン間・ライン-アース間のコンデンサとして選定されるケースが多く見られます。

モータ駆動・インバータ回路での活用

モータ駆動回路やインバータ回路では、大電流・高電圧が印加されるスナバ回路や直流リンクコンデンサとして、耐圧性と低損失性に優れたポリプロピレンフィルムコンデンサが多く採用されています。

自己回復性を備えることで、突発的な過電圧や短絡に対する信頼性向上にも寄与します。

車載機器・産業機器における採用例

車載機器や産業機器では、高温環境下での動作や長期信頼性が強く求められることから、高信頼性のポリプロピレンフィルムコンデンサや、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイドフィルムコンデンサが採用される傾向にあります。

特に、車載インバータやパワーコンディショナなど、過酷な使用環境下で長期間の安定動作が求められる機器において、フィルムコンデンサの特性が重要な役割を果たしています。

まとめ

フィルムコンデンサは、誘電体フィルムと金属電極を組み合わせた構造により、優れた周波数特性、高い絶縁抵抗、温度・湿度に対する安定性、そして長寿命・高信頼性を兼ね備えたコンデンサです。

ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドといった材料ごとに特性が異なるため、用途や求められる性能に応じた適切な選定が重要となります。

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